2014年12月24日水曜日

今年の一冊 『T・S・スピヴェット君 傑作集』

柿
NEX-6 & Sonnar T* E 24mm F1.8 ZA SEL24F18Z

 そろそろ年末なので、今年一年を振り返り、一番気に入った本を御紹介。
 ライフ・ラーセン著、『T・S・スピヴェット君 傑作集』です。

 紹介しても読む楽しみを奪うことはなさそうなので、最初に概要についてBookデータベースから引用しておきます。

モンタナに住む十二歳の天才地図製作者、T・S・スピヴェット君のもとに、スミソニアン博物館から一本の電話が入った。それは、科学振興に尽力した人物に与えられる由緒あるベアード賞受賞と授賞式への招待の知らせだった。過去にスミソニアンにイラストが採用された経緯はあるものの、少年はこの賞に応募した覚えはない。これは質の悪いいたずら?
そもそもこの賞は大人に与えられるものでは?
スピヴェット君は混乱し、一旦は受賞を辞退してしまう。だがやがて、彼は自分の研究に無関心な両親のもとを離れ、世界一の博物館で好きな研究に専念することを決意する。彼は放浪者のごとく貨物列車に飛び乗り、ひとり東部を目指す。それは、現実を超越した奇妙な旅のはじまりだった。
アメリカ大陸横断の大冒険を通じて、自らの家族のルーツと向き合う天才少年の成長と葛藤を、イラスト・図表満載で描き上げる、期待の新鋭による傑作長篇。

 簡単に言ってしまうと、天才少年(現代風に言えばギフテッド)の冒険譚、行きて帰りし物語なわけですが、その構成が凄い。
 スピヴェット君の語る本筋の物語が見開きの真ん中に綴られていて、その両脇にスピヴェット君の独り言、注釈、雑学、そして数多くの図版、イラスト、地図が散りばめられています。
 未読の方にこの魅力を伝えるのはなかなか難しいのですが、あちこちそれる人間の思考をそのまま本にしたようなイメージ、といえば少しは伝わるでしょうか。

 そして、この本の魅力をさらに高めるものとして、紙の本としての存在感にあります。
 正方形に近い形の大形本でページ数は381p、紙質もしっかりとしたもので手に持つとずっしりと重い。小説というより絵画集のような作りです。この本の魅力をしっかりと伝えるには、これぐらいのサイズは必須ですね。
 最初は重たくて持ち運びも億劫なのですが、読み進めるうちに今度はだんだんとカバーがソフトタイプなのが残念になってきます。せっかくだからハードカバーにしちゃえばよかったのにね。
 ちなみに、読む前は出版社は国書刊行会だろうと勝手に思い込んでいたのですが、よく見たら早川書房でした。ははは。

 というわけで、年末年始にお時間が取れる方は、ぜひ読んでみてください。
 なお、『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督により映画化(映画『天才スピヴェット』公式サイト)もされています。

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