2009年8月25日火曜日

生きることの悲しみとユーモア  『町奉行日記』 山本周五郎

擬態
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 山本周五郎の作品を次に何を読もうかと書店の新潮文庫の棚の前で少々迷ったのだが、前回読んだのが『寝ぼけ署長』だったので、タイトルだけで『町奉行日記』を選んでみた。
 『寝ぼけ署長』と違って連作短篇ではなく、様々な小説の入った短編集。気に入ったのは、『晩秋』と『わたくしです物語』。前者はしっとりとした物語、後者はユーモアあふれる物語である。

 話変わって。
 国も時代もまったく違うのだけれど、この短編集をを読んでいると山本周五郎とO・ヘンリーとが重なって見えてきた。物語が似ているとか、そういう意味ではなくて、作家としての基本が重なって見える。
 たとえば、『わたくしです物語』と『赤い酋長の身代金』なんて物語としてはまったく違うけれど、なんだかとても似ている。舞台をニューヨークにして名前をアメリカ風にすれば、O・ヘンリーが『わたくしです物語』を書いた言われてもまったく違和感がないような気がする。


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