2025年5月26日月曜日

DaVinci Resolve の Film Looks カテゴリの LUT を使ってみる

 DaVinci Resolve には 標準で多くの LUT が付属していますが、その中に Film Looks というカテゴリーの LUT があります。
 今回は、この中から”Rec709 Fujifilm 3513DI D65” を使ってみます。

 このLUTは名前からすると、一般的な Rec.709 で撮影した動画を富士フイルムの映画用フィルム「エテルナ」(”3513DI”は調べるとエテルナの一種のようです)のような色調にするものかと思いましたが、少し違います。
 このLUTの想定している入力カラースペースは、色域はRec.709ですが、ガンマは Gamma 2.4 ではなく、Cineon Film Log になっています。出力は Rec.709 / Gamma 2.4 です。これを前提に LUT を適用する際は CST の設定をする必要があります。
 なお、Cineon Film Log(シネオン・フィルム・ログ)は、映画フィルムの広いダイナミックレンジをデジタルデータとして記録するために米コダック社が1990年代初頭に開発した対数エンコーディング方式です。 

1. Color Management の設定

 まず、前提となる Color Management の設定です。
 今回の Color Management の設定はこんな感じ。Color science に DaVinci YRGB Color Managed を選択して RCM(Resolve Color Management) を使用、Color processing mode を Custom にして、素材に合わせて設定しています。
 なお、HDR1000対応のモニターを使っているので、Timeline working luminance は HDR 1000 を選択しています。

 素材は、S-Gamut3.Cine / S-Log3 の動画です。
 何もノードを組んでいないときでも、RCM が働いて次のようになります。

2. ノードツリー

 今回のノードツリーはこんな感じ。LUT 適用の実験なので、簡単に組んでいます。

 LUTの適用に必要なのは後半3つのノードで、①Color Space Transform (CST) で Timeline のカラースペースからLUTの入力カラースペースに変換、②LUTを適用(今回は Film Looks の “Rec709 Fujifilm 3513DI D65”)、③CST で LUT の出力カラースペースから Timeline のカラースペースに戻す、という流れです。

 後半の LUT を先に設定してから、前半部分のノードで、ホワイトバランス、彩度、露出・コントラストを調整します。
 ノードツリーは画像の順番ですが、実際の調整は、露出・コントラスト、彩度、ホワイトバランスの順番で調整することが多いです。

3. LUTの前の CST の設定

 LUT の前に置く CST は Timeline のカラースペースからLUTの入力カラースペースに変換するものなので、次のような設定になります。

 Input Color Space と Input Gamma はタイムラインを使い、Output Color Space は Rec.709、Output Gamma は Cineon Film Log に設定します(繰り返しになりますが “Rec709 Fujifilm 3513DI D65” の入力は、色域は Rec.709、ガンマは Cineon Film Log が想定されています)。
 Tone Mapping Method は デフォルトの “Davinci” で大体は大丈夫ですが、Gamut Mapping Method は彩度の高い素材だと “Saturation Compression” (彩度圧縮) を使った方がいい場合もあるかも。

4. LUTの後の CST の設定

 LUT の後ろに置く CST は LUT の出力カラースペースから Timeline のカラースペースに戻すためのものです。

 Input Color Space は Rec.709、Input Gamma は Gamma 2.4 に設定し、Output Color Space と Output Gamma はタイムラインを使います(繰り返しになりますが “Rec709 Fujifilm 3513DI D65” の出力は、色域は Rec.709、ガンマは Gamma 2.4 が想定されています)。

5. LUT の設定

 CST で挟まれたノードに LUT(“Rec709 Fujifilm 3513DI D65”) を適用するとこんな画像になります。比較として下に LUT 適用前のものを載せています。

6. LUT の前段のノードの調整

 LUT の前のノードで彩度や露出・コントラスト、ホワイトバランスなどを調整します。調整するノードは LUT の前に置いたほうが 破綻しづらいです。

 今回は、①コントラストを少し上げる、②ColorSlice で Saturation をわずかに上げる、③ホワイトバランスの微調整、などを行っています。比較のため、下に LUT 適用のみの画像も載せています。

 なお、彩度の調整は Color wheels よりも DaVinci Resolve 19 で追加された ColorSlice(減法混色で調整する新機能)で調整する方が自然に調整できるように感じます。

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